先日の話をしよう。
僕はその日、のっぺりとしたどうでもいいような悪いような用事を済ませるために渋谷に向かっていた。
明大前から井の頭線のホームに向かい、人波に巻き込まれながら渋谷行き電車に乗り込んだ。
足元に気を付けながら軽く溜め息をつき、視線を前に戻すと彼女と目が合った。
彼女はどこかの高校の制服を少しだらしなく着こなし、口元には100円もしないアイスキャンディが寄せられていた。
通勤時間帯からは少しずれていたが、それでも車内の吊り革は様々な手によって売り切れ状態である。
彼女はそんな車内の状態を1ミリも気にする様子もなく、シャリシャリと小さく小気味いい音をたてながらアイスキャンディを口にし僕を見つめていた。
僕は視線を彼女から外し、中吊り広告に目をやり、彼女の視線をやり過ごした。
中吊り広告には、とても僕の興味のあるようなことは書いてなかったが、彼女のアイスキャンディを見ているよりかはいくらかましだった。
「あ、当たった。ほら、ねぇ、当たったよ!」
不意に彼女は左手中指を伸ばして、僕の肩をツンツンと突きながら嬉しそうに言った。
僕は突然の出来事に上手く対応できずに間抜けな顔をしていると、彼女が付け加えた。
「変な女と思ってるでしょ?」
僕はようやく声がでた。
「いや、別に・・・」
彼女は僕がそんな答えをするのを100%予想していたように、したり顔でニヤリと笑った。
「絶対そう言うと思った。でもね、当たりは当たりなの。わかるよね?こんなの子供でもわかるし。そうでしょ?」
「あぁ、そうかもしれないね」
「違うの!そうかもしれないじゃなくて、そうなの!」
「・・・そうなんだ?」
「うん。そう!ほら、これが証拠だよ」
彼女はそう言うと、さっきまで食べていたアイスキャンディの棒を僕に突き付けた。
僕は彼女のアイスキャンディの棒を受け取り、表裏とまじまじと見てみたが、そこには[当り]という焼印はなかった。
電車は駒場東大前に着いた。
「じゃあね。当たりのおじさん。あ、まだお兄さんかな?あはは」
彼女は悪戯っぽい笑みを口元に浮かべながら僕をからかうと、人の合間を滑るようにしてホームに降り立った。
鈍い音を立てながらドアが閉まる。
僕の手にはアイスキャンディの棒が握られている。
電車は確実に渋谷に向かっていた。
いつの間にかブログ書いてるし…w
さすが文系ですね。
先日の画伯の絵を挿絵に使ってみては如何ですか?
ファンが急増するかもしれませんよw
投稿情報: ウシ | 2010/07/04 09:42
>ウシ様
ご訪問ありござです(≧▽≦)
って、5ケ所くらいでそれぞれ適当に書き綴るのも中々骨が折れますわ(自爆)
投稿情報: to-y♪ | 2010/07/05 09:15