「ん?なんか言った?」
「あっ、ううん。なんでもない」
「そう?あ!でさぁ、映画なに見る?俺はさぁ・・・」
そういえば、あの日もここで映画の話だったっけ。
緊張して何を話していいかわからなくて、適当にハニカンだり、わけもなくやたらと毛先を指先でいじったり・・・
あれから何年?
二年・・・くらい?
早いなぁ・・・
あの日も、こうして窓際の席でミルクティーを飲んでいたんだよね・・・
「でさぁ、やっぱ、映画観終わったら何か食べに行きたいんだけど、俺的には、こないだマー君が言ってたパスタ屋に行きたいわけ!」
「えっ?あっ、いいんじゃない?」
「おいおい・・・、さっきから何か変だぞ?」
「そ、そぉ?何でもないよ。大丈夫大丈夫」
なんか・・・
あの時と似てるな・・・
彼は一生懸命話してくれるのに、私はどこか上の空。
最初がそんなんだったし、しょうがなかったのかな?
結局、あの恋は実らなかった。
なんでだろ?
なんでだろ・・・ね?
「ちょっとさ、言わなければならないことがあるんだ・・・」
「え?」
「彼女ができたんだ・・・」
「えっ!?」
「ごめん・・・」
「ごめんって、私はなんだったのよ!?私は、私は・・・」
「ごめん・・・」
「さっきから『ごめん』って、やめてよ!」
「子供が・・・子供ができたんだ。だから・・・だから・・・」
「もぉ!いいかげんにして!彼女の次は子供!?馬鹿にするのもいいかげんにして!!」
「ごめん。嘘じゃないんだ。だから、お前とはもぉ・・・」
放心状態っていうのは、あれがはじめての経験だった。
なんなんだろ・・・あれって・・・
気付かないうちに涙が勝手に溢れてきて・・・
なんで?なんで?ねぇ?なんで?
「凝縮した悲しみの粒が頬をつたって零れ落ちたら、明日にはきっとその頬を優しく撫でてくれる人が現れるから・・・」
その言葉が最後の言葉だったなぁ・・・
そっか・・・、あれからもう二年か・・・
早いな・・・
「だーかーらー!俺はパスタ屋にしたいわけ!聞いてる?なぁ?聞いてる?」
あ・・・そっか・・・
私は、今ここにいるんだ・・・
「なぁ?聞いてる?」
「うん!わかったわかった!そうしよ!ほら、映画はじまっちゃうよ?ほらほら早く早く!」
あの日握れなかった手を今日は私からしっかりと握って、私は走りはじめた。
さようなら。あの日の私。
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